園内八王子神社の池もすっかり深緑に包まれ、
森と一体となったその姿は、どことなく荘厳な雰囲気を漂わせています。
水辺に佇んでいると、俗世間の騒々しさも時の流れも忘れてしまいそうです。
…と、対岸を見つめていると、
あの白い塊はもしや…?
モリアオガエルの卵塊です!!
森林公園よりずっと山奥の、池の平の沼は毎年多くの卵塊が見られ、県の天然記念物となっていますが、
森林公園のエリア内にまでモリアオガエルの生息地は広がりつつあるようで、この八王子神社の池も、ここ数年数個の卵塊が見られるようになりました。
これは今季初めて発見した卵。
2~3日前にはまだありませんでしたから、ほんのここ1~2日の間に産み付けられたものなのでしょう。
じっと耳を澄ますと、モリアオガエルの鳴き声らしきものも聞こえてきます。
木魚を鳴らすように、太く、低く、ゴッ、ゴッ、ゴッ、っと、鳴るその声は、
アマガエルやヒキガエルの鳴き声ともずいぶん違って、
貫録のある落ち着いた響きです。
神秘的なこの池の雰囲気に妙にマッチしています。
直径20cmほどのこの卵塊の中には、今、卵が300~400個も入っているはず。1週間から10日くらいすると、雨に打たれたこの卵塊が溶け、中から小さなオタマジャクシが出てきて下の水の中に落ちます。
池に落ちるとそこにはたくさんの天敵が待ち構えています。
他の蛙、イモリ、ヤマカガシ、ヤゴなどです。
彼ら天敵から辛うじて生き延びた一部のオタマジャクシが、カエルに成長し、やがて森へ帰っていきます。
このように、モリアオガエルの生育にはいくつかの条件が必要です。
まず、沼の周りにちょうど良いあんばいの枝や葉が飛び出している、産卵適地。
しかも池や沼といっても、日の当たりすぎる乾燥した場所では難しいようです。
なぜなら、この卵塊があまり乾きすぎると中の卵が全滅してしまうこともあるからです。
とはいえ、卵塊の表面は中の卵が孵化するまである程度乾いている必要もあります。ジメジメしすぎると卵塊の表面が溶け出してしまうのです。
適度な湿気があり、風通しも良く、やがて梅雨を迎え卵塊を溶かす雨をもたらすような場所。
そしてさらに、産卵に適した場所のほかにも、周囲には、カエルとなった後に暮らす豊かな森も必要です。
ここ野底山の地は、そんなモリアオガエル好みの厳しい条件をクリアした貴重な場所なのです。
観察に訪れる際には、親ガエルを驚かせないように、そっと静かに見守ってくださいね。
野底山のモリアオガエルに関してはこちらのページでも説明しています。
ご覧ください。
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